耐震対策って何?
耐震対策の必要性
耐震診断で既存の建物の耐震性が十分でないと判断された場合、もしくは、正式には診断調査を受けていなくても、明らかに耐震性の低下が疑われる症状が見られる場合、なるべく早めに対策を打つことをお勧めします。耐震対策とは、万一に備えるという意味ではなく、当然いつか来るべきリスクへのマネジメント課題として重要視されつつあります。 製造業の工場の耐震対策は、まさに事業継続を主眼においた必須項目と言えるのです。
そもそも耐震対策が注目されたのは新潟県中越沖地震の際に、自動車部品メーカーの株式会社リケンが被災したことに始まります。この時、生産ラインの操業が停止してしまったために、大手自動車メーカー12社の生産がストップするという事態となりました。この教訓から、下請けの部品メーカーも地震が起こった際にも被害を最低現に抑え生産を止めない態勢を用意することを半ば義務付けられるようになったのです。
これらのことからも、人命を守るため、企業価値の向上のため、企業の資産を守るためにも生産施設において耐震対策を打つことは重要なことなのです。
耐震対策のポイント
耐震対策を進める際にはまず現状を把握する必要があります。その地域で想定されている地震動に対して、現状でどの程度の耐震性があるのか、どの程度壊れる可能性があるのか、といった部分を構造的な計算も踏まえた上で診断を行います。これを耐震診断といいます。
診断の結果、耐震性が不十分であれば、特に重要な部分から補強をします。この場合は、専門家の目から見た上で、人命を守るために最低限重要な部分から、被災しても事業継続が可能である範囲まで、いくつかのレベルがありますが目標を明確にし、補強をしていく必要があります。
耐震補強の手法には様々な方法がありますが、壁面や屋根・床裏に筋交い(ブレース)を取り付けて垂直面や平面の強度を増すこと、柱と梁の交差部に三角プレートを付けて大地震に対する粘りを出すこと、柱の根元の部分(柱脚)を基礎にしっかり固定すること、劣化しているコンクリートの壁面にガラス繊維を貼り付けて崩壊を防ぐこと、ひびの部分にエポキシ樹脂を注入し、コンクリートの劣化を回復すること、などが代表的な手法です。当該建物の構造や材質、地盤や劣化の程度など、状況に合わせてこれらの手法を選択することが重要です。